Rin_Mikageのブログ

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【ネタバレあり】ネット怪談百物語五十死夜 感想

こんばんは。ネット怪談×百物語 五十死夜 公開されましたね!

今回のタイトルは「ミニマリスト」とのことですが、どんな話なのでしょうか?

 

目次

 

 

百の蝋燭部屋前

Blancoさんとおとぺんさんが話をしている。職場の愚痴で盛り上がったあと、Blancoさんは瞑想を始める。仕事を辞めた後、自由な生活を謳歌していた。Blancoさんは比較的物の少ない整った部屋で心落ち着いた生活をしている。「物を捨てることで、ストレスを溜めない生活ができる。」とすら話し、物を捨てることをおとぺんさんに勧める程に。

 

怪談話「ミニマリスト

生活するために必要最小限の物を持って生活する人を「ミニマリスト」という。Blancoさんも友人から「ミニマリスト」の存在を教わり、生活に活かしている。

ところが、その友人は「ミニマリスト」を適用したら不思議な人生を送っていた。

 

その友人は資産家令嬢で、おっとりした性格で誰かに対し怒りの感情を向けることを見たことのない、おしゃべりが大好きな穏やかな女性だったという。大学生の頃に出会い、就職後も時々会って話す仲だった。その友人はセレクトショップの経営を行なっており、業績も良かった。

ある日、Blancoさんが友人と会った時、「ミニマリスト」について力説された。あまりに力説するものだから、「ミニマリスト」についての本を買って読み、理解を深めた。

Blancoさんは「ミニマリスト」という概念に出会ったことで自分と向き合い、無駄なものや自由を得ることができた。

必要なものとそうでないものがわかる。お金も貯まる。やるべきことが明確になる。というメリットに囲まれて。

ところが、その友人は違ったようだ。持っていた外車を売り、電車通勤に。家に帰る時間がもったいないから、仕事場として使っていたビルで生活することにした。身の回りのものを処分し、宝塚の舞台も見に行かなくなったという。籍を入れていた彼氏との結婚式と新婚旅行も無くなったため、顔合わせは友人の家で行われた。その際、手土産にケーキを持参したが、冷蔵庫も無くなっていた。やがて携帯も処分したために友人と連絡が取れなくなった。半年後、セレクトショップを訪ねたら、閉店していた。友人の家を訪ねると、不機嫌な顔で出迎えられた。机も椅子も何もないフローリングの床に座らされ、友人の話を聞いた。

「好き嫌いがはっきりしたら、嫌いが増えた。

浪費しなくなったから、お金が不必要だと分かった。

自由な時間はできたけど、目標がなくなり、何かをする気が失せた。

いらないものばっかり考えてたら、旦那がいらなく思えてきて。

それから、いちいち訪ねて来る友達とかもね。」

その話を聞いてBlancoさんは帰った。その後、友人とは会っていないという。

 

終話

話を聞いたおとぺんさんは、「世の中に不必要なものはないと思う。人間関係は特にそう。自分にとって得か損かだけなんて、そんなに簡単に割り切れるものなのか。」と言った。

欲しいものがあるからバイトすると語るたんポポさんと、それを肯定するえまえまさんが話し、この夜は終わった。

 

感想

今回も全員参加。さすが女子会w。死蟲男さんがどんどん周りにつられて喋ってるあたり、コミュ力上がってる。

お話の最中、リリぃさんの後ろを猫さんが通っているんだよな。和む。

本編の話はミニマリストをやってるとよくある事のような気がして身につまされる。

やりすぎ禁物。考察としては

・「車を手放して、電車通勤にした」とあるが、今まで車生活だった人が電車通勤をした時のストレスは尋常じゃないと思える。自分以外の見知らぬ他人と同じ空間にいるストレス、時刻通りに目的地につかないストレス、などなど。

・「家と仕事場を一緒にした」とあるが、これは悪手としか言いようがない。

仕事とプライベートの境目が曖昧になり、リラックスする時間が減ってしまう。

昨今、リモートワークが推奨される世情だからか想像に容易い。

・「身の回りのものを処分し、宝塚の舞台も見に行かなくなった」とあるが、

これらは友人さんにとって心の余裕の供給源になっていたのでは?

仮にそうだとしたなら、自分で自分を追い込む行動になる。上二つでストレスを溜めた状態でこの行動をとっているのなら、以前の生活よりストレスも大きいのではないか。

・「冷蔵庫一つない生活をして、やがて携帯も持たなくなった。」

これで、生活から余裕が減っていく。さらに自分を追い込んでしまっている。

半年後の描写では「机も椅子もないフローリングの床に座らされた」とあるので、全てのものを無駄に感じ、無くすことで心の平穏を保とうとしたのだろう。だが実際は悪化したのだろうけれど。人間関係すら断ってしまうほどに余裕もないのだから重症だ。

 

もともとこの女性は豊かなものに囲まれた生活をしていた。ブランド物のバックを買っていたり、外車も持っていた彼女にとって、それらを得ることで心の余裕を保っていたのではないか。自分にとって落ち着く環境を、「ミニマリズム」に傾倒することで失ってしまったようだ。純粋さが生んだ悲劇ともいえよう。

 

物を手放すことで大切なものも失ってしまった、悲しい女性のお話。